Imagineerとは何者か?ディズニーの世界を「設計」する人たちの正体

Imagineerの思想と仕事

まばゆい光が差し込む小道を抜けると、ふと空気が変わる。香りも、音も、景色さえも、どこか現実とは異なる――まるで物語の中に足を踏み入れたかのように。だが、それは偶然ではない。すべては“彼ら”の仕掛けた魔法。目に見えぬ手で世界を紡ぎ、あなたを物語へと誘う案内人たち――Imagineer。

この記事では、Imagineerとは何者なのか、どんな仕事をしているのか、そしてなぜディズニーの体験は特別なのかを紐解いていきます。

Imagineer(イマジニア)とは?ディズニーの体験を設計する専門集団

Imagineer(イマジニア)とは、ディズニーが誇る”体験の設計者”。
正式には Walt Disney Imagineering(ウォルト・ディズニー・イマジニアリング) に所属する専門職を指します。

その役割は、単なるアトラクションの設計者ではありません。想像力(Imagination)と技術(Engineering)を融合させ、物語を空間として、感覚として、そして記憶として立ち上がらせる、いわば“世界を創る人々”です。

そこには、来場者がひとときでもその物語の中に身を置いているかのように感じられるよう、空間、演出、仕掛け、動線、香り、音…五感のすべてを駆使して紡がれた設計哲学が息づいています。

Imagineerという言葉に出会ったとき

わたしは恥ずかしながら、Imagineerという言葉を初めて耳にしたとき、その意味を深く理解できていませんでした。

最初は、カリブの海賊やシンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジなどに登場するオーディオアニマトロニクスを作っている専門職のようなものだと、漠然と思っていたのです。

しかし、その実像に触れるにつれ、彼らが作っているのは機械や仕組みだけでなく、まさに「体験そのもの」であり、ひとつの世界観を訪れる人々に手渡している存在だと気づかされました。

「Imagineer」という名に宿る思想

この言葉は、「Imagine(想像する)」と「Engineer(設計・工学する)」を掛け合わせて生まれた、ディズニー独自の造語です。
この言葉は1960年代にはすでに使われており、1984年に「WED Enterprises」が
Walt Disney Imagineering へと改称したことで、正式な名称として定着しました。

想像する力と、具現化する技術。その両輪がなければ、幻想はただの夢想に終わります。Imagineerとは、夢を現実に変える者。その思想そのものが、ディズニーパークの根幹に流れる哲学なのです。

職種を超えた横断チーム――Imagineerの正体

Imagineerは、デザイナーでも、建築家でも、エンジニアでもありません。

その実体は、100以上とも言われる多様な専門分野のプロフェッショナルたちが集い、物語を形にするために横断的に協働するチーム。

アーティスト、建築家、科学者、プロデューサー、プログラマー……彼らはそれぞれの専門性を超え、「物語を体験として届ける」ために力を合わせます。

ストーリー、空間、技術、演出がひとつの軸で結びついてこそ、Imagineeringは初めて完成します。

「物語を歩かせる」設計

メモ:テーマパーク内の没入感ある空間写真(街並み・屋内外演出が分かるもの)

Imagineerたちが創り出すのは、ただの建物や機械ではありません。

来場者がいつの間にか物語の中に迷い込み、まるで自らがその世界の一部であるかのように感じる——そんな“体験”そのものを設計します。

そのために必要なのは、

  • 空間のデザイン(建築、景観、色彩)
  • 感覚の演出(音、光、動き)
  • 動線や視線、時間感覚の操作
  • ストーリーを読み解き、感じさせる仕掛け

このような繊細な工夫の積み重ねが、訪れる人々の心に余韻を残すのです。

たとえば「カリブの海賊」や「ホーンテッドマンション」では、
ライドに乗る前から出口に至るまで、物語が途切れないよう細部まで設計されています。

パークに息づく想像の工学

Imagineerの設計思想は、パークの至るところに密やかに息づいています。

たとえば、エリアとエリアの“境界”を感じさせない構造。そこには視覚処理や音響演出による滑らかな遷移が組み込まれており、まるで異なる物語が自然に繋がっているかのような感覚を生み出します。

エリアとエリアの“境界”を感じさせない具体的な内容は、こちらの記事で詳しく紹介しています。(準備中)

また、匂い、光、音、温度など、五感を巧みに操ることで、物語世界への没入感を高めているのもImagineerの技です。

視線の誘導や、効果音の“聞かせ方”ひとつとっても、すべてが物語体験のために緻密に設計されています。

世界観の一貫性を最優先する価値観

Imagineerが最も大切にしているのは、「世界観の一貫性」。

一般企業が「効率」や「利益」を最優先するのに対し、Imagineeringでは“物語を壊さないこと”を何よりも重視します。短期的なヒットよりも、何度訪れても新しい発見があるような、長期的な体験価値を追い求めるのです。

この哲学は、以下のような形で現れます:

  • プラシング(改善の精神):常に完成を疑い、より良い体験を追求する
  • ストーリー起点の設計:物語に必要な体験から逆算して技術を選ぶ
  • ゲスト視点の徹底:来場者の感情や記憶に残る演出を最優先にする

映画を通して知ったImagineerの息吹

『ウォルト・ディズニーの約束』という映画を観たとき、わたしは、メリー・ポピンズの原作者パメラ・トラヴァースの想いや、シャーマン兄弟がどのようにしてあの名曲を生み出したのかを知りました。

当時はImagineerという視点を持たずに観ていましたが、その存在を知ってから改めて観返したとき、作品の背景に息づく世界観づくりの“設計”が垣間見えたような気がしたのです。

目に見えるものだけでなく、その奥にあるストーリーと設計思想。そのすべてが一体となって「ディズニーらしさ」を支えていることに、あらためて深い感動を覚えました。

Imagineerを知ることで、ディズニーが変わって見える

ディズニーの「Imagineer(イマジニア)」とは、物語を空間と体験として現実に落とし込む“想像の設計者”たち。彼らは建築や機械だけでなく、光や音、香り、動線までも使い、訪れる人が物語に没入できるよう緻密に設計を重ねます。多様な専門職が協働するImagineeringの中核には、「世界観の一貫性」を守るという哲学があり、それは一つひとつの演出の裏に息づいています。

この視点を知ると、ディズニーパークでの体験は一変します。たとえばエリアの境界が自然につながって感じる理由や、何気ない演出に隠された物語の意図に気づくことができるかもしれません。次にパークを訪れるときは、「どんな思いでこの空間が作られたのか」に意識を向けてみてください。見慣れた景色が、きっと違って見えてくるはずです。

気づかなかった仕掛けに目を凝らすとき、あなたのディズニー体験は、もうひとつ深い次元へと広がっていきます。

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